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植物から見る名古屋の環境

2023共育講座 植物から見る名古屋の環境
2023/8/12 レイチェル・カーソン日本協会東海フォーラムによる「なごや環境大学2023前期共育講座」が開講されました。

2023前期講座の第3回は、「植物から見る名古屋の環境」として、都市化とともに減っていく緑、名古屋の環境を植物を通して考えます。
講師は、名古屋産業大学現代ビジネス学部准教授、長谷川泰洋さんです。長谷川さんは以前名古屋市生物多様性センターの植物専門員としてお勤めされており「鎮守の森」「生物多様性の保全」などを専門とされています。
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講義は、詳しい配布資料とともに
① 生物多様性と都市化の現在
② 絶滅危惧種からみる生態系の変化と保全
③ 生物多様性と健康
④ 生物多様性と共にある豊かな都市生活
と展開され、生物多様性と現代社会生活についてご説明を受けた。
特に私たちにとって最も関心があるものの分かり難い、よく知らない生物多様性と私たちの健康、生活までについてご講義を受け、私たちにとって生物多様性の意味、大切さを良く知ることができた。
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世界では生物多様性の損失が続き、早期に生物多様性の損失を食い止め、むしろ増大させなければ、取り返しのつかない事態になることが危惧されている。
長谷川先生の講義の最後に、「30by30目標」を紹介された。「30by30目標」は2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させるというゴールに向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全し次の世代に繋げて行くことを目標とするものであり、名古屋市でもこの活動に参加している。
日本では生物多様性ホットスポットとして、里地里山が重要であると言われている。
私たちも積極的に、「里地里山保全活動」「都心の生きもの復活事業」に参加していきたいと思っている。

なごや環境大学前期講座はこれで終了です。
後期講座は10月開講予定です。

志ある行動者となるためにーSDGsを学ぶ

2023共育講座 志ある行動者となるためにーSDGsを学ぶ
2023/7/15 レイチェル・カーソン日本協会東海フォーラムによる「なごや環境大学2023前期共育講座」が開講されました。
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2023前期講座の第2回は、「志ある行動者となるためにーSDGsを学ぶ」として
SDGs推進シニアコンサルタント岡崎真弓さんによる”森の未来を考え森のことを知るカードゲーム「森と未来」“が開催されました。

このカードゲーム「森と未来」は、陸、森の豊かさと抱える課題を知り解決すべく山梨日日新聞社が進める「やまなしSDGsプロジェクト」の一環として企画制作されたもので、①森の役割と私たちの生活の関わり②経済活動と森林資源の好循環③協働し共に取り組むことの大切さを学ぶことを目的としています。
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なごや国際センターの会場での参加者は全員、山の所有者・住宅メーカー・森林組合・学校の先生・猟師など様々な仕事を持った10種類のプレイヤーとなり互いに森と未来について夢をもって考え話し合いました。

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次回環境大学共育講座は8月12日(土)植物から見る名古屋の環境―名古屋産業大学准教授、長谷川恭洋さんによる座学です。

予定が変更になっています。お間違えのないよう宜しくお願い致します。


スズメバチから見る名古屋の環境

2023共育講座 スズメバチから見る名古屋の環境
2023/6/17 レイチェル・カーソン日本協会東海フォーラムによる「なごや環境大学2023前期共育講座」が開講されました。

2023前期講座の第1回は、「スズメバチから見る名古屋の環境」をテーマに、日本応用動物学会の山内博美さんによる講義がなごや国際センターにて開催されました。
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私たちは、スズメバチと聞くと怖い!刺されたら大変だと思いますが、講師の山内さんは名古屋市の職員として長くスズメバチ対応、昆虫行政に携わってきたこの道の大ベテラン。山内さんは「スズメバチの生態を良く知り必要以上に怖がらず上手につきあっていくことが大切だ」と述べられます。そして、資料に基づいて①スズメバチの種類、生態②スズメバチと人との関わり③スズメバチはなぜ人を刺すのか④スズメバチは危険な虫か・・・
について説明を受けました。
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正しく怖がると言っても、怖いものは怖い。そこで、更なる知見は山内さんの著書「都市のスズメバチ」(中日出版社)と山内さんによるホームページ「都市のスズメバチ」に詳しく掲載されています。
今週末にもスズメバチによる刺傷被害の報道がありました。正しく怖がるために是非山内さんの著書、ホームページも参考にして下さい。

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なお、環境大学前期講座の予定に変更があります。7/15と8/12の講座を入れ替えました。
7月15日(土)志ある行動者となるためにーSDGsを学ぶーSDGs推進シニアコンサルタント岡崎真弓
8月12日(土)植物から見る名古屋の環境―名古屋産業大学長谷川恭洋
へと変更しました。
お間違えのないよう宜しくお願い致します。



レイチェル・カーソンのつどい2023

今年でレイチェル・カーソン日本協会は、関西フォーラム設立15周年、東海フォーラム5周年を迎えることになりました。
このことを記念して、アースデーの2023年4月22日に、なごや国際センターにおいて「レイチェル・カーソンのつどい2023」を開催しました。
杉山範子さん


約3時間に亘ったつどいでは、映画「WENDE2未来へのアプローチ」(95分)を鑑賞の後、映画に主演されていた杉山範子さん(名古屋大学大学院環境学研究科特任准教授)による講演「持続可能な未来社会に向かって」があり、杉山さん、映画の監督高垣博也さん、レイチェル・カーソン関西フォーラム代表原強さんを交えて「未来へのアプローチ」についてのトークが繰り広げられました。
杉山さんからは気候変動に対して感性を大切にしたい。気まぐれの行動では対応しきれず、社会のルール変更をもたらす行動が望まれる。高垣さんからはエネルギーの地産地消に一歩踏み出すような映画を目指した。また原さんからは気候変動問題に対して国際社会の取り組みは必要だが、それが不十分であっても地域からできることはある、そのことをこの映画から学んだとの発言がありました。
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会場は全国から70名程の参加者の熱気で溢れました。
会場発言

水俣と福島「困難な過去」をどう継承するか


2022/12/17 レイチェル・カーソン日本協会東海フォーラムによる「なごや環境大学2022後期共育講座」が開講されました。
2022後期講座の第3回は、水俣と福島「困難な過去」をどう継承するか、をテーマに、大阪公立大学院研究科除本理史教授による講義がなごや国際センターにて開催されました。

除本理史先生は大阪市立大学環境経済学宮本憲一先生の研究室を引き継いでおられ、いわゆる「公害研究」の編集グループでご活躍されています。
講義開始

『沈黙の春』出版から60年、四日市公害判決から50年になる2022年の今、全国各地で「公害経験の継承」が課題となってきているが、それぞれの地域の歴史、社会、特性が複雑に交錯し継承がスムーズに進んでいない状況にある。

 先生の講義は、この「継承の問題を考えたい」、とトマス・コバンの著作Public Historyの紹介から始まった。この本は大災害、大事故、戦争、植民地支配、奴隷制などを『困難な過去』、『困難な歴史』とし、これらから得られる歴史的教訓を市民の立場でいかに引き継いでいくのかを述べている。なぜ困難と言われるのか、それは社会のなかで被害者、加害者が複雑に絡み合っているからである。
公害も大災害、大事故、更には戦争、植民地支配、奴隷制などと同じく多くの人的(環境的)犠牲を伴った『困難な過去』、『困難な歴史』と考えられる。
公害を次世代に正しく継承し考えることは人権・平和など人間社会の普遍的価値を深く考えることに繋がるが、これらの継承問題を巡る議論は、被害者と加害者という特定の立場に立った議論に陥りやすく、互いの合意形成が難しく分裂を招き易くなっている。
分裂を乗り超え正しく継承するにはどうすればいいのか?

過去の事実・課題を、被害者・加害者の視点だけで捉えるのではなく、多視点性を持った目で再解釈すべきである。お互いのコミュニケーションのなかで多様な視点からの解釈を許容する姿勢を持つべきである。このことが、分裂分断を緩和し、互いに住む「地域の価値」に気付きスムーズな継承に繋がっていく。

『困難な過去』、『困難な歴史』をめぐるコミュニケーションでは当事者に対する倫理的配慮や生命、健康、人権や平和という普遍的価値を尊重することは当然である。
加害者と被害者の立場を引きずっていては『困難な過去』、『困難な歴史』から深い教訓を学び継承していくことは難しい。『困難な過去』、『困難な歴史』の継承は、多視点性を持った目で過去の事実の再解釈をすることで、互いに住む地域の価値として気づき認め合い共有していくなかから可能となっていく。
講義中

多視点性の目で公害経験の継承を①水俣病、②福島原発事故、③水島コンビナート公害を例に考えたい。
① 水俣病
★正当な補償問題、地域経済、加害企業の衰退(水俣は典型的な企業城下町で、地域全体が被害者と加害者の対立関係にあった。)

➡水俣市長は、地域の分断崩壊を乗り超え地域再生をめざすため「もやい直し」を標語にかかげ水俣病を前面に打ち出し、水俣病を地域固有の個性価値として打ち出した。
➡水俣病学習として、チッソを糾弾するのでも免罪するのでもなく公害経験を踏まえて社会に対する企業責任の在り方を学んでいる。
➡水俣病の学習を観光振興へと結びつける努力している。
海で生計を立てられなくなった患者たちが甘夏生産に転換し、消費地へ水俣病を伝えながら有機農産品を販売するグループが誕生している。

② 福島原発事故
★都市部から地方へのリスクの押しつけ、結果として地方住民がふるさとを奪われた。
(放射線被ばく、大規模な住民避難、避難の長期化、不安、人生設計の崩壊、ふるさとの喪失、地域社会の崩壊、避難地域内外での賠償格差)

➡一面的な官製の継承は進められているが、ふるさと喪失市民側からの継承が課題。
➡飯館村では日本一美しい村を合言葉に独自の住民参加の地域作りに努力していたが福島事故で状況は一変した。
➡飯館村では景観的価値の見直し、農村空間の商品化を図り、また各自避難先では提供商品の質の向上を図りながら事業の再開を進めている。

◎現在の地域作りに関して「福島の経験を継承する」トークセッションが2023/1/21・22に開催される。

次に多視点性の観点から協働の活動が進み公害経験の継承が進展している水島コンビナート公害を取り上げたい。
(みずしま財団林美帆さん登壇)
林さんとともに

③ 水島コンビナート公害
★公害裁判・和解等の経過を経ても地域社会に典型的な被害者と加害者の敵対関係が残る。
➡水島公害地域で新たな街づくりに挑戦
1994公害訴訟判決
1995『水島再生プラン』作成
1996公害裁判和解、
2000みずしま財団設立
2022みずしま資料館開設
➡公害継承としての資料館活動の協働ポイント
① 地域歴史を掘り起こす
② 複数人で地域の人とヒアリング
③ 現在・過去・未来でストーリー化し全員でチェック
④ 過去の写真、資料を探し出す
⑤ 結果を小冊子『水島メモリーズ』にまとめ配布する。
➡この地域協働の公害継承活動をまとめた『地域の価値をつくるー倉敷・水島の公害から環境再生へ』を刊行
みずしま財団の活動は、現代日本の地域方向性を探るひとつの指針になるのではないか。

講義のまとめとして除本先生は、
公害被害を受けた地域における協働の難しさは、『困難な過去』をめぐる立場の違いに起因しているが過去を避けて通ることは問題の解決につながらない。むしろ『困難な過去』に積極的に向き合う必要があり、公害経験の継承に積極的に取り組むことが協働のきっかけになるとまとめられた。

『水島メモリーズ』によると水島コンビナートは太平洋戦争中に三菱重工名古屋航空機製作所が水島に進出したことに端を発するそうです。その水島が多視点の目で公害資料館を開設し公害経験の継承に頑張っている事実をお聞きし、名古屋に住む我々も公害継承へ意を強くしました。


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さて今期講座もこれで終了です。
2023年も引き続いて、レイチェル・カーソンの思いをつなぐ講座を企画しています。
みなさま、良いお年を!

来年もどうぞよろしくお願いします。