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つどい講演記録

レイチェル・カーソンのつどい2018記念講演記録
2018年5月27日に名古屋で開催されたレイチェル・カーソンのつどい2018記念講演の記録です。
カーソンは「この地球は人間だけの世界ではない。動物も植物もみんないっしょにすんでいるのだ」として私たちに「いのちの言葉」を残しました。“つどい”では、上遠会長と高村名大教授に「カーソンの伝えたかったこと」と、今日の世界的課題「世界は再生エネルギーの時代に向かう」についてご講演をいただきました。
資料と一部の記録はここ
上遠代表 
(上遠恵子会長講演)
 日本協会が発足して30年。カーソンの哲学を語り継ぐ歩みを始めた当時は高度成長の時代でした。スーパーでレジ袋を断ると店員からは「万引きと間違えられるからもって行って!」と言われたほどでした。カーソンはそのような時代の25年も前の1962年に「沈黙の春」を書き化学物質による環境汚染について警告を発しました。この本によって私たちは環境問題について目を開かされました。いわば人類の恩人です。
1987年の『沈黙の春出版25周年、レイチェル・カーソン生誕80年記念集会』の熱気は凄いものでした。アメリカのレイチェル・カーソン協会から理事のジェイ・フェルドマン氏が来日され「アメリカの農薬事情」という講演をされ、また農薬推進派の人も参加し発言するなど熱気あふれる会が持たれました。翌年の協会設立の頃には会員は500名を超えました。そのような会は多くの場合、三年も続くと、先細りしたり分裂するものですが、この会は「ゆるやかなつながりで末永く」という会として30年持続してきました。また、日本より歴史が古いアメリカのカーソン協会も現在も活動しています。

地球は人間だけのものではありません。たくさんの生命の糸で編み上げられた美しいネットでおおわれています。人間もその網目の一つです。その人間が科学技術という強大な力をもったためにネットが綻びを見せています。地球は汚れ、たくさんの命が絶滅してきました。地球はたくさんの生命が一緒に暮らす星です。新参ものの人間が大手を振って汚して続けていることをどう思うのか?カーソンは科学文明のありかたに疑問を投げかけ、その再構築が必要だと言っています。科学技術には越えてはいけない一線があります。
カーソンはやってはいけないことを止めるために、『SILENT SPRING』を書き、その信念を支えるものとして『SENS of WONDER』を書きました。まさに、この2冊は車の両輪です。
彼女は、越えてはいけない線として化学物質汚染と放射能汚染を訴えています。カーソンは幼い時から母親と森の中を歩き、生きものたちが互いにかかわり合いながら生命をささえている生態系を体験的に理解していました。『沈黙の春』は1962年から現在も版を重ねています。それは彼女が提起した問題がいまだに解決していないからであるとともに、この本が経済の言葉ではなく生命の言葉で書かれているからだと思います。

『センス・オブ・ワンダー』では「地球の美しさについて深く思いをめぐらせる人は、生命の終わりの瞬間まで生き生きとした精神力を持ち続けることができるでしょう。
 鳥の渡り、潮の満ち干、春を待つ固い蕾のなかには、それ自体の美しさと同時に、象徴的な美と神秘がかくされています。自然がくりかえすリフレインー夜の次に朝が来て、冬が去れば春になるという確かさーそのなかには、かぎりなくわたしたちをいやしてくれるなにかがあるのです。」と言っています。

私たちは「地球の美しさ」を感じ取れる感性を持ちたいと思います。私たちは経済ではなく生命に軸足を置くべきです。先進国ではこれ以上豊かにならなくてもいい。平和と生命が大切です。平和でなければ生命は存続できないのですから。

カーソンは、がんが転移して歩けなくなった1963年10月、サンフランシスコで「環境の汚染」と題する講演を行いました。その内容は聴衆の予想に反し、化学物質による環境汚染よりも放射性物質による環境汚染に重点をおいた講演でした。・・

放射性物質による環境汚染は、あきらかに原子力時代と切り離せない側面です。それは核兵器実験ばかりでなく、原子力の「平和利用」とも切っても切れない関係にあります。こうした汚染は突発的な事故によっても生じますし、また、廃棄物の投棄によっても継続的に起こってもいるのです。私たちがすむ世界に汚染を持ちこむという、問題の根底には道義的責任―自分の世代ばかりでなく、未来の世代に対しても責任を持つことーについての問いがあります。当然ながら、私たちは今現在生きている人々の肉体的被害について考えます。ですが、まだ生まれていない世代にとっての脅威は、さらにはかりしれないほど大きいのです。彼らは現代の私たちがくだす決断にまったく意見をさしはさめないのですから、私たちに課せられた責任はきわめて重大です。

 50年前に語られたこの言葉は、福島の原発事故を経験した現在の私たちの胸を打ちます。原発は止めなければなりません、それは未来の世代のために行なう私たちの責任です。
 今こそ、私たちは、経済の言葉ではなく、生命の言葉で話しましょう。

『沈黙の春』17章「別の道」では、“私たちはいまや分かれ道にいる。いまさら迷うまでもない。長い間旅をしてきた道は素晴らしい高速道路ですごいスピードに酔うこともできるが、私たちは騙されているのだ。その行き着く先は、禍であり破滅だ。もう一つの道はあまり人も行かないが、この分かれ道をいくときにこそ、私たちの住んでいるこの地球の安全を守れる最後の唯一のチャンスがあると言えよう。どちらの道をとるか、決めなくてはならないのは私たちなのだ。”と書いています。

私たちは「別の道」へ行く勇気を持ちましょう。
(拍手)

講演後の「戦争とは何だ」録音でお聞きください。


高村ゆかり名大教授


(高村ゆかり先生講演)

(司会)

「再生可能エネルギーの時代に向かう」ご講演をいただく、国際環境法がご専門の名大教授、高村先生をご紹介します。

高村先生)

温暖化ガスの排出は90%以上エネルギーに起因している。エネルギーと温暖化は密接な関係にある。(福島の事故がきっかけに)2015年あたりからエネルギーを取り巻く世界が大きく変わってきた。カーソンも指摘しているが、20世紀は科学技術が進展しまた問題も起こしてきた大量生産大量消費社会だった。換言すると化石燃料を使い豊かになった時代である。一方で、生じた問題を解決できなかった世紀でもあった。このことを反映して国は、地球の限界を示したプラネタリーバウンダリの考え方を取り入れるようになってきた。つまり、環境と経済は密接な関係にあるが、経済は環境の基盤がないと崩壊してしまうということを国の計画に書くようになった。

 

(p35世界の最終エネルギー消費(電気、ガス、車、熱などすべて)において、再エネは計20%である。原子力は2%に過ぎない。ただし、再エネ20%のうち伝統的バイオマス(薪、炭)が9%あり今で言う新再エネは10%程度である。すなわち今でも80%は化石燃料に依存している。

(p5電気だけで見ると1/4は再エネになっている。中国の電力は1/4が再エネになった。ただし、まだ水力が大きい。新しい大規模水力は地元に負担を与えることもあり注意が必要。

 

世界では(近年横ばいにはなってきたものの)年2%のペースで最終利用エネルギーが増えている。中でも再エネは急激に増えている。

(p6発電設備で見ると、再エネ大国は中国である。風力だけでアメリカ全再エネよりも多い。今や再エネは中国とアメリカが中心になっている。

(p10再エネはあてにならないと言う。でも、デンマークは風力だけで40%まかなっている。工夫すれば利用を増やすことができる。技術をうまく使うとできる。

 

(p11 2015年がエネルギー転換期。新規発電設備の半分以上が再エネになった。発電インフラが変わってきた。理由は再エネ導入費用が下がってきたからだ。(新規導入量グラフが上下を繰り返すのは、コスト減を反映している。)

 

再エネ投資は増大してきている。いい循環ができてきた。

(p16理由はどの再エネコストも火力と同じ程度になってきた。特に太陽光が劇的に下がった。

太陽光は場所を選ばない。どこでも光があれば発電できる。その太陽光のコストが5年で1/2に、火力のコストと同じになってきた。風力も下がった。特に洋上風力のコストが下がった。(p19大気汚染対策を考慮すると再エネはさらに使いやすい。

 

(p20太陽光のコストは日本はアメリカと並んで高い。中国の2倍。工事費、送電線接続工事費が押し上げている。日本はコストを下げる工夫が必要。

 

(p21何故中国は増えているのか?再エネコストが下がっているからだ。アメリカはトランプが石炭を使うと言っている。しかし、国内ではシェールガスが安いので国内では使わず余った石炭を東南アジア、ポーランドへ売っている。

 

(p22日本ではどうか?まだ再エネは石炭より高い。増やすには政策的工夫がいる。化石燃料使用の負の部分、温室ガス対策、大気汚染対策などの費用をコストに反映させる必要がある。そうしないと転換が進まない。

 

(p23 2014年から2016年にかけて世界の消費エネルギー総量は増えていないが、経済成長は年平均3%はある。省エネ再エネ転換の結果を反映し温暖化ガス排出量は横ばいになった。

(p24日本は原発事故の影響があったが、今は再エネ、省エネの効果が出ている。

 

(p26これはいいことだ。雇用増加の面である。途上国ではエネルギーアクセス向上、大気汚染対策など社会の仕組み在り方を変える効果がある。

中国は今や世界最大の再エネインフラ持っている。大気汚染対策と経済戦略、雇用増のためでもあるが、それは他の国も同じだ。

(p29日本はどうか。事故前は再エネ1%程度だったが、2015年には7.5%になっている。それでも他国に比して低い。ドイツでは電気で30%が再エネになっている。

 

(p41ZEVは北米、中国、欧州で導入が進む。ZEVはバッテリがあり、家庭での太陽光で余った電気を車で蓄電するなど再エネの仕組みに新しい効果を生んでいる。

 

ビジネスにも変化がでてきた。

(p57RE100(再エネ100%)に世界で132社が約束している。日本も6社。

(p59企業の再エネ調達が拡大してきた。これまで、電気を選んでこなかったが、選ぶようになってきた。

(p63地域の状況も変わってきた。九電では需要のピークの66%が再エネで賄うようになった。工夫すればできる。

 

今エネ庁ではエネルギー基本計画改正案のパブコメ中である。

2030年までに再エネを日本の主力電源にすることを目指す。自給率を上げ、地域の雇用を増やし、コストも下がっていることを背景に再エネを増やしていく方向性が書かれている。

 

再エネは地域に根差して育っていく必要がある。導入すればいい、というわけではない。科学技術をうまく使っていくことが大切で地域のなかでうまく育てていかねばならない。

 

(拍手)

(司会)

高村先生、ありがとうございました。

それでは、東海フォーラム代表伊藤から閉会の挨拶をいただきます。

 

高村先生のまとめの言葉と閉会の挨拶は録音でお聞きください

 代表 原強関西フォーラム

 閉会挨拶  東海フォーラム会長 伊藤容子         司会 関西フォーラム 原強




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