2020年12月5日の共育講座は、気候ネットワーク主任研究員伊与田昌慶さんによる「パリ協定始動。COP25&温暖化の今」と題する講義であった。折からのコロナ蔓延の状況であったが、ご覧のように蜜は抑えて感染防止対策をおこなったうえで開催された。

実は東海フォーラムでは、伊与田さんの講演は2016年度にも行っており2度目である。前回は2015年のパリ協定締結を受けての開催、今回はその後の世界の動きを中心にお話をいただいた。
お話からは、激動する世界にあって、かねて環境先進国と言われていた(思い込んでいた)日本の凋落ぶりが明らかとなった。私たちが今、コンセントの向こう側の電気の様子に無関心であることが恥ずかしくなってきた。
お話は「気候変動の実態と影響」から始まった。
① 地球上の温暖化ガス濃度が急激に上昇している。
② 気温上昇による熱中症などの健康被害が顕在化し、凍土の溶解によるメタンなどの温暖化ガスの放出や古くからの病原菌の放出が心配されるようになった。
③ 山火事の多発による生物多様性の喪失
④ ヒトの地球上の居住空間の喪失
近年の地球の居住地喪失人口は2,800万人。うち戦争、内紛による喪失が1,080万人、気候変動による喪失が1,610万人となり、戦争、内紛で失った人よりも気候変動により失った人が多いことには驚いた。
2015年、国連は2030年に向けてSDGsとして17の開発目標を定めた。エネルギーの課題は開発目標7としてとりあげられてはいるが、気候変動は単なる環境問題を超えた課題として、17の項目すべてに関連する共通の課題である考えられている。
パリ協定には目標達成への道筋に本質的な課題を抱えている。
パリ協定は世界の気温を産業革命以前より1.5〜2.0度上昇に抑えることを目指しているが、そのために目標通りCO2発生を抑えたとしても気温目標数値は超えてしまうからだ。今のパリ協定では化石燃料はほぼ使えない状況になっている。それでも気温上昇は抑えられず目標に届かない。
CO2排出実質ゼロを達成し、再生可能エネルギー100%の時代が到来したとしても、その上に更なる野心的目標の樹立と到達努力が求められる。そのため、更なる野心的目標確立と、市場メカニズムの抜け道塞ぎなどの点が2021年11月グラスゴーで予定されるCOP26の中心的課題となってくる。

伊与田さんの講義は、日本は温暖化の加害国であり最大の被害国である。日本こそ世界の先頭に立って温暖化に向き合わなければならないと纏められた。
コロナ禍の今、街はプラスチック容器であふれてきた。コロナ後の経済回復は元の社会にもどしてはいけない。グリーンリカバリを実現し、世界に尊敬される環境日本を再生させていきたいものだ。
公害に苦しんだ私たち日本。それを優れた日本の技術と努力で克服してきたと言われてきた。しかしそれは、地球の労力を食いつぶし、地球の資源を食いつぶした結果であったのだ。そこにやっと日本人は気がついた。安倍首相は、マーシャル諸島共和国首相から「脱石炭を早く実施してほしい」と手紙を受け取ったそうである。マーシャル諸島と言えばビキニ環礁水爆実験、第5福竜丸被爆、沈黙の春と思い出されるが、そのような国からも温暖化への努力を要請され、下を向く日本とは何だろう。
世界からは、石炭中毒日本と言われているそうだ。その目にわたしたちは気がつかない。日本は自覚なき環境後進国になってしまっているのだ。
伊与田さんの講義を聞き、「コンセントの向こう側」に思いをはせて生活していきたい。
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