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なごやの生物多様性〜都市のはざまで生きる

2021共育講座 「なごやの生物多様性〜都市のはざまで生きる」

2021/8/7 夏本番の中、レイチェル・カーソン日本協会東海フォーラムによる「2021前期なごや環境大学共育講座第3回」が開講されました。なごや国際センターに於いて、密を防ぐなど十分な感染対策を講じた上での開催です。

今回のテーマは「なごやの生物多様性〜都市のはざまで生きる」です。
なごや生物多様性センターにも在籍され、現在は四日市大学環境情報学部准教授の野呂達哉先生の報告です。
生物多様性2

私たちは、虫、鳥の声や野に咲く花などに命を感じながら日々暮らしています。ところが飼い犬などのPETを除くと、本来身近な筈の哺乳類の命を感じながら日々暮らすことは殆どありません。

何故でしょうか?で始まった野呂先生の報告。
都会に暮らす私たちはPETを除けば、そもそも哺乳類に出会う機会が少なくなってきている。として名古屋市の野生哺乳類の現状の説明があった。

★都市に住む野生哺乳類について
〇名古屋市のような都市域では、生活様式の変化とともに宅地化や都市化が急激に進行。その結果、緑地やため池、水田といった生きものの住処は著しく減少し、残された自然環境は都市に【浮かぶ島】のような様相を呈している。
〇その残された生きものの住処も分断、孤立化し質的な劣化が激しくなっている。
〇さらに、追い打ちをかけるように、【侵略的外来生物】が各地に放たれ分布を拡大し在来生物に脅威となった。
〇都市域ではかつて普通に見られた生きものが現在では【絶滅危惧種】とされることも珍しくなくなった。
〇名古屋市では絶滅の恐れがある野生生物のリストに解説を加えて【レッドデータブック】として2004年に刊行し、その後データはアップデートしている。
〇江戸時代の尾張地域の哺乳類の分布をみると、オオカミとカワウソがすでに絶滅したことがわかる。
〇このような在来の哺乳類が減少絶滅する原因としては
1狩猟2都市化3感染症の蔓延4外来種の侵入などが、挙げられるが、都市域では【2都市化による生息域の消失、分断】などが最も大きい。
〇現在の名古屋における野生生物の代表的な生息地域は
・東谷山地域(市外の緑地との連続性、森林性の強い種の生息)
・東部丘陵地域(孤立した緑地としてモグラ、ネズミの生息、各所でアカギツネも確認)
・名古屋城(外堀などにモグラ、タヌキ、希少種オヒキコウモリなどが生息)
・庄内川流域、西部水田地域(カヤネズミ、コウベモグラなどが生息、タヌキなどの移動経路)が挙げられる。
〇センサーカメラの発達もあって、生息状況の把握が進み、アカギツネなどは高速道路の建設で生息地域が一時期分断されたものの、最近その生息域が拡がり東部丘陵全地域に拡がってきたことが確認されている。アカギツネの都市への順化がすすむ一方で交通事故、疫病などによる死も目立ってきている。

〇名古屋で確認されたコウモリ
・オヒキコウモリ絶滅危惧種ⅠA
 名古屋城のライトアップに集まる餌を採っていることが確認されている。
・ヒナコウモリ
 名古屋城小幡緑地などで生息
・キクガシラコウモリ絶滅危惧種ⅠA
守山区才井戸流で確認。大規模店舗建設により生息域が危機。

★外来哺乳類による生存競争の激化
・ヌートリア
戦時中に輸入・飼育、その後毛皮の需要が減り放棄されたことが契機、南米原産で、周年で繁殖する。草食性で稲や根菜類を食べるため農業被害が発生。また穴を掘って営巣するため畦などを損壊。
・シベリアイタチ
戦前に放獣されたことが契機。ニホンイタチを駆逐し、イタチのほとんどがシベリアイタチになってしまった。
・ハクビシン
原産は中国。戦時中に毛皮用に持ち込まれたことが契機(江戸時代に持ち込まれた記録もあるが)今では市内全域に生息
・アライグマ
原産は北米。雑食性で夜行性。人家の屋根裏にも棲みつく。1年1回春に3〜6頭の仔を産む。
在来種を捕食し農作物への被害、住居への侵入や、アライグマ回虫などの人畜共通感染症の感染源になる。
水辺環境を好むことから水辺環境の生態系に大きな影響を与える。
急速に生息域を拡大しているため、積極的な捕獲による防除対策が必要。
生物多様性1

野呂先生は最後に次のように纏められた。

都市化が進んだ市内であっても自然環境が残る地域には外来種の脅威にさらされながら今も細々と生き残る種が存在する。
これらの野生生物を守るためには、【なごや生物多様性センター】のような野生生物の生息状況を把握する拠点が重要だ。そして市街地における生態系ネットワークを評価し今後の都市域における生物多様性保全や自然再生を図っていくことが必要である。

講義会場で出席者からの「人間社会にペットは必要か?」の質問に野呂先生は「ヒトのエゴ、飼育放棄が外来種問題を引き起こしている面があるが、反面ペットは人間社会の文化になっている。ペットとヒトが共存してきたからこそ現代社会もあるとも言える。

なるほど、この問題は○×では答えることができない。

次回のレイチェル・カーソンの思いはつなぐ前期講座第4回は
NPO法人藤前干潟を守る会理事長亀井浩次さんによる「市民の力で保全された藤前干潟の現状と展望」です。
8月28日(土)午後2時〜
於:名古屋市港区稲永ビジターセンター(行き方クリックして下さい)

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