2021/10/23 レイチェル・カーソン日本協会東海フォーラムによる「2021後期なごや環境大学共育講座」が開講されました。なごや国際センターに於いて、密を防ぐなど十分な感染対策を講じた上での開催です。
2021後期講座は第2回で予定していたテーマが講師のご病気で11月20日へ延期となり、今回10/23のテーマは「東海市における降下ばいじんについて」です。

環境未来研究所代表永井安広さんによる講義でした。
永井さんは73歳、北九州市で生まれ、福岡県立高校を卒業後、新日本製鉄に入社、鉄鋼短期大学を経て、名古屋製鉄所に配属され以来ほぼ東海市で生活されてきました。
講義名は「東海市における降下ばいじんについて」でしたが、講義が進むにつれ、降下ばいじん問題はテーマの展開のひとつのきっかけに過ぎないことが分かってきました。お話の中心は、繰り返される公害のなかで、人々のなかで薄れていく環境汚染への危機感だったと感じました。
公害にはさまざまなステークホルダーが存在します。被害者、原因企業、働く人、住民、自治体、国、大学などです。被害者、企業、労働者、住民、行政みんな公害解決に頑張ってきました。そこの互いの立場の尊重と理解が基本にないと公害経験の伝承は進まないと言われています(「公害資料館のネットワークと協働」での講師林美帆さんの話)。
今日の講師永井さんからは、長く公害企業で働き、定年後もその企業城下町で生活をするなかで、原因企業、住民、自治体が公害解決のために今も努力している姿を語っていただきました。
〇東海市にある日鉄東海製鉄所は名古屋南部公害訴訟(あおぞら訴訟)で11社の被告のうちの一つだったが、2001年名古屋高裁の調停で和解した。
〇降下ばいじんは減少傾向にあったが、東海市の南部地域は近年増加傾向を示すようになった。
時として焼結機の煙突から煙が見えるようになった。
〇この環境悪化現象に市民の関心が薄い。
・企業城下町であるため、市民が問題提起に躊躇する。
・行政も、幹部の顔色をみるばかりで、議会も労組出身議員が多く、問題提起を邪魔さえする。
・企業OBも企業批判にアレルギーがある。

このような状況にあって、永井さんたちは、議会などを通じて問題提起の市民活動を行うのだが、市側から巧みに論点をかわされ続けている。今では、市民団体の高齢化によって、議論に基づく活動や伝承が危うくなり、活動団体の存続すら危うくなってきている。
そのような状況でも永井さんは市の公募委員を勤めながら、市職員へ技術的なアドバイスを行いつつ意思疎通を図り幾度の改善提案を行ってきた。行政は知識経験が少なく、丁寧な説明を繰り返す中で、良好な関係を構築した結果、行政からデータがでてくるようになった。永井さんは、行政との良好な人間関係が重要である、このことが活動の教訓として得られたという。
〇2001年に和解した名古屋南部公害訴訟の和解条項を逸脱しても平気な現在の状況に永井さんは警鐘を鳴らしている。
いつまでも無くならない公害と高齢化で減っていく当事者の間で、公害経験の何を、どうやって継承するのか?永井さんたちも(「公害資料館ネットワーク」も)悩みながら闘っている。
次回の共育講座は11月20日水俣フォーラム理事長実川悠太さんによる「水俣病」の世紀と今日の課題です。みなさん 映画「MINAMATA」はご覧になりましたか?
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